「もっと響く音を出したい」「でも、今さら変えられるの?」そんなふうに感じている大人のヴァイオリン奏者の方へ。音が変われば、演奏が変わり、音楽そのものがもっと楽しく、もっと自分らしいものへと育っていきます。この記事では、実際のレッスン例を交えながら、“自分の音”を見つけて育てていくためのヒントをお届けします。

はじめに
アマチュアオーケストラで演奏されている方の中には、なかなか思うように音が出ずに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。自分の音が「なんだかきたない」「響かない」「周りと馴染まない」、そのもっと前に、「どんな音をだしていいのかわからない…」そう感じながらも、練習の仕方がわからず、何年も同じ状態のまま過ごしてしまっている、という方も少なくありません。
けれど、安心してください。あなたの音は、変えられます。
たとえ大人になってから始めたとしても、変わります。
そして、音が変わると、演奏そのものが変わり、音楽に対する姿勢や、自分の可能性までが広がっていくのです。
音が汚くなってしまう原因とは?
これは少し厳しい言い方になってしまうかもしれませんが、アマチュアの方の中には「美しい音とは何か」を知らずに、ただ弓を弦にこすりつけ、スピカートなどは、弦を “ひっぱたくように”して 音を出している方が少なくないように思います。
また、音を出そうとすることに精一杯で、自分の出している音を “聴いていない” こともあります。
(これは若かりし頃の 私自身 でもありました。(汗))
左指を動かすこと、(アバウトな)音程、弓の位置などに気を取られてしまい、自分の音に耳を傾ける余裕がない。結果として、音は硬く、深みのない、乾いた、うすい音になり、響きも広がりません。
オーケストラでは、その上に、「他のパートを聴く」「指揮者を見る」「プリンシパルの動きに合わせる」といった要素も加わります。自分の音を聴く余裕もなく、周りを聴く余裕もない……という状況に、心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
(ムカシの自分なのですから、書いていて、自分自身の「耳が痛い」です。)
ある大人の生徒さんの変化: 音が変わると演奏が変わる

私のレッスンに通ってくださっている生徒さんで、アマチュアオーケストラで演奏されている方がいます。先日、彼女のスタンドパートナーが「ボウイングがすごく変わったね!」と驚いた表情で話しかけているのを目にしました。
実は、彼女は「音が汚い」というタイプではありませんでした。弓で弦をひっぱたくような弾き方は絶対にしない方です。けれども、弓の上の方(先弓)になると音が抜けてしまい、音量も質感も軽くなってしまっていたのです。
この原因は、弓の持ち方(支え方)にもありました。右手の使い方を一緒に見直し、元弓から先弓まで、どの位置でも安定して 均一な音 が出せるように、基礎練習を一緒に重ねていきました。
具体的には、開放弦をゆっくり弾きながら、自分の音をよく聴き、弓の動きにあわせて、手の使い方をコントロールする練習を毎回のレッスンで続けました。
月に2回のレッスンで、もう1年ほどが経ちますが、最近になってようやく、「先弓でもしっかり音が鳴る」という感覚が彼女の中に芽生えてきました。
また、このような地味な練習で成果を得ていることを、ご自身でもようやく実感できることで、このような練習にもより一層、前向きになれているのでは、と思います。
論理的で、具体的な指導を心がけています
私のレッスンでは、とにかく「論理的に」「具体的に」教えることを大切にしています。
「この音が出ないのは、なぜか?」 「どこに力が入っているのか?」 「どこに重さをかければ、音が響くのか?」
そういったことを、言葉と身体の感覚を結びつけながら、丁寧に説明していきます。
大人の方は理解力が高く、理屈がわかるとすぐに吸収される方が多いです。私はその力を信じて、レッスンでは「今、大切なことの優先順位」を明確にし、やるべきことをしぼってお伝えします。
よくするべき点は、いくつもあるでしょう。けれども、「あれもこれも」と焦る必要はありません。まずは、ご自身が気になることから、そして、ご自身が直しやすいところから、取り組めばよいのです。大人だからこそ、時間に限りがあるからこそ、「本当に必要なこと」にしっつかりと取り組む。それが、無理なく成長していくコツだと思っています。
大人からでも遅くない。大人の上達に欠かせない、音を聴く力
また、自分の音をよく聴く習慣が身についてくると、演奏全体の質がぐっと上がってきます。
「この音、ちょっとうすいな」 「もう少し重さをかけてみよう」 「弓の角度を少し変えてみよう」
そんなふうに、演奏中に自分で気づき、修正できるようになります。
そして何より、音に対する感性が育ってきます。「こんな音が出したい」「このフレーズはもっと歌いたい」という気持ちが、自然と湧き上がってくるようになります。音楽が、ただの作業ではなく、自分自身の表現になっていくのです。
これは、オーケストラで演奏する上でもとても重要です。自分の音がコントロールできるようになると、周りの音も聴く余裕が生まれます。プリンシパルの演奏方法に合わせることができるようにもなりますし、指揮者の意図を感じ取って表現したり、そして、ほかのパートに合わせたり、必要なところでは、ほかのパートのアーティキュレーションをまねしたり……そんな音楽的な“対話”が生まれてくるのです。
そして、音を聴く習慣が身につくことで、「リズム感」や「テンポ感」も育っていきます。
「いつも走ってしまう」「周りより遅れてしまう」といった悩みを抱えている方の多くは、自分の音を聴き取る力がまだ育ちきっていない場合があります。音の出だしや終わり、音符と音符の間の“間(ま)”に意識を向けるようになると、自然とテンポの流れをつかみやすくなり、アンサンブルの中でも安定した演奏ができるようになります。
リズムやテンポは、ただメトロノームで練習すれば身につくものではありません。自分の出している音をよく聴き、周りの音に耳を澄ませる。目に見えない 息づかい や 休符の際の身体の使い方を見て、そこから出てくる音を感じる——このような意識の積み重ねが、演奏全体の 正確性、音楽性 をつくっていくのです。
ヴァイオリンを愛するあなたへ
私は、ヴァイオリンを愛するすべての大人の方の味方でありたいと思っています。
「もう歳だから」「学生時代にもっとやっておけば」 そんなふうに思ってしまう方もいるかもしれません。でも、私はこれまでたくさんの大人の生徒さんと向き合い、確信をもっています。
あなたの音は、必ず変わります。 そして、演奏はもっともっと楽しくなります。
だからこそ、私は今もこうして、一人ひとりの生徒さんと丁寧に向き合いながら、日々レッスンをしています。
もし、あなたが——
- 自分の音に納得がいかない
- 周りと音がなじまない気がする
- 弓の動かし方がわからない
- もっと音楽的に弾きたい
……そんな思いをお持ちでしたら、ぜひ一度、レッスンにいらしてください。
あなたの音が、変わるきっかけになるかもしれません。
ご一緒に、音を育て、自分だけの音楽を紡いでいきましょう。
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