イヴァノヴィチ「ドナウ川の漣」 [篠崎バイオリン教本2巻]

篠崎ヴァイオリン教本2巻 51番、52番、53番は再び イ短調 a minor  のセクションになりますね。イ短調はすでにでてきていますが、51番のスケールは9番よりも1オクターブ高くなっています。

53番:ヨシフ・イヴァノヴィチ 「ドナウ川のさざなみ」

ヨシフ・イヴァノヴィチ /  Iosif Ivanovici  (1845ー1902)はルーマニアの軍隊音楽隊の隊長、指揮者であり、作曲家でした。300以上の作品を書いていますが、そのほとんどは残っていないようです。

同時代の作曲家、ヨハン・シュトラウス2世のワルツ「美しき青きドナウ」は 明るい気品に満ちていますが、対比をなすように、1880年に作曲されたイヴァノヴィチのワルツ「「ドナウ川のさざなみ」は、どこか憂いのあるメロディーとすばらしいオーケストレーションにより、彼の代表作となっています。

ワルツとは 穏やかなテンポが変わることなく保たれる3拍子((強・弱・弱)の踊りで、男女がペアになって円を描きながら踊ります。19世紀から20世紀初頭にとても人気のあった踊りで、その頃にさまざまなワルツの型ができました。

スピカートについて考えはじめましょう

篠崎先生は「弓をはずませる練習」と題して、スピカートの導入の機会をここで提案してくださっています。

スピカートはむずかしい弓の使い方で、すぐに上手にできるようになるものでもないので(笑)、ぜひこの機会に練習をはじめてみましょう。

今回は以下に スピカートの導入・準備 だけについて触れようと思います。

スピカートの導入のための3つの練習

スピカートは篠崎先生もおっしゃっているように「弓をはずませる」という言葉で表現されることが多いと思いますが、私自身の感覚からいうと ストロークとストロークの間に弓が弦から離れる 弓の使い方です。はずませる というと ボールのバウンドのような上下運動のイメージのほうが強く印象づけられますが、ヴァイオリンのどのストロークにおいてもそうですが、スピカートにおいても大切なのは、そのストロークにより、音をだす=弦を振動させる ことなので、私は ヴァイオリンの基本的なストロークである デタシェ(弓を水平に動かす)から派生する と考えることをおすすめします。

そして、スピカートの際には、弓の重心点のあたりで演奏することが多いため、ある程度の弓の重みをきちんと右小指で受け、支えられるようになっていないといけません。

私のところで はじめてヴァイオリンを学ぶ生徒たちは、はじめてのレッスン後、割にはやい段階から、弓をもってのちょっとしたエクササイズをはじめるため、このころになると、右小指もきちんと意識できるようになっています。

上記のことをこころにとめながら、以下のエクササイズをしてみましょう。

(これはできることならば、動画としてご紹介したいところです)

1.下半弓を1/3ずつ(もしくは半分)にわけ、それぞれの箇所でデタシェがスムーズにできるようにする。

この練習の際には、とくに、右肩、右上腕などに余計な力が入らないように注意します。肘は身体に近くなりすぎない程度に上げますが、高くなりすぎないことも大切です。高く上げすぎてしまうと、上腕の筋肉を積極的に使いすぎてしまい、美しい音を損ないます(そこないます)。

2.弓を弦上に落とし、バウンドを感じる練習をする

弓を弦のうえに落とすとどんな感じがするのか確かめてみましょう。

そのまま弓を上下させ続けてみましょう。

小指で弓の重みを感じることができていますか?

3.1のそれぞれの箇所で Brush stroke の練習をする

Brush stroke とは 弓を はけ にたとえて、弦のうえをなでるイメージです。

なでるため、弓を弦に落としたときのような 衝撃 がでないようにします。

これらのエクササイズは前出のとおり、スピカートの練習をはじめる前の導入エクササイズです。まずは この段階からこれらのエクササイズをはじめ、ある程度時間をかけて、これらをできるようにしていきましょう。

ですので、53番の「ドナウ川のさざなみ」の16小節目以降は、曲全体を弾く際には、デタシェで弾くようにして、もし、弓がはずんでくれたらラッキー ♪ くらいの気持ちで取り組むことをおすすめします。

とくにEの音(ミの音)をオープンストリング(開放弦)にすると、移弦が必要になり、左手も指をつかわない分、らくちんになるため、脱力の機会がつくれますし、E弦でミの音を弾くときに、弓を弦から離しやすくなため、それ以降の音 F とG(ファとソの音)などは自然と弓がはずんでくれる可能性が高くなります。

弓がはずんでくれたらラッキー♪  でよい理由

この 弓がはずんでくれたらラッキー♪  というのは実はとても大切な姿勢です。なぜなら、弓ははずむようにできているため、弾き手が弓に上手に そうさせてあげないといけないからです。私たちは、ただただその弓がうまくはずんでくれるように弓を導いているだけ なのです。私たちがヘンに積極的になり、弓がはずもうとしているのを妨げないようにして、弓にはずんでもらわないといけないのです。弓としっかりと対話ができるようになる、つまり、感覚を研ぎ澄ませ、弓の動きをしっかりと感じられるようになる感覚を養うこともとても大切なことなのです。

動画のご紹介:一緒に練習をはじめましょう!

篠崎バイオリン教本2巻 / Shinozaki Violin Method no. 51, 52 and 53: Ivanovich – Waves of the Danube

このYoutubeチャンネルには、篠崎ヴァイオリン教本、鈴木ヴァイオリン教本などの練習補助動画がたくさんありますので、ぜひsubscribeなど、よろしくお願いいたします!動画を通してでも、みなさんとご一緒できることを楽しみにしております! 

この曲の勉強が終わったら、次はこちら:

[篠崎バイオリン教本2巻] ヘ長調音階, 「行進歌」, モーツァルト「メヌエット」

Happy Practicing! 

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4 thoughts on “イヴァノヴィチ「ドナウ川の漣」 [篠崎バイオリン教本2巻]

  1. 演奏中も小指で弓の重みを感じることができているのですか?
    そうであれば、弓の握りは相当軽そうですね。

  2. 古武術稽古さま、
    弓は 持つ、握る というよりも、手のなかでバランスをとりながら 支えている というイメージです。
    私自身、以前はだいぶ握っていましたし、今も、多少その片鱗があるかとは思いますが(汗)

  3. 古武術において剣の扱いも手の中でバランスを取りながら支える感じです。それを「手の内」と言いますが、手の内を拝見するという言葉がある様にそれで実力がわかってしまいます。ヴァイオリンも似た様なところがありそうですね。

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